IT業界の仕事の進め方

IT業界の仕事の進め方を考えてみます。

私たちの生活の隅々で利用されているIT企業のサービスですが仕事の進め方も複雑です。
業界は違いますが、古くからある建築業界と比較して説明します。

建築業界では、施主(発注者)とゼネコン・下請け(専門業種)など仕事をいくつかの段階に分けて発注し仕事をしています。
施主の注文はゼネコンや大手建設会社が受注し、地元の建設会社が、型枠作り、基礎工事、下水道工事、電気工事などの専門業種に分かれてさらに下請けに仕事を発注し、下請けの専門業者が請負をして仕事を進め一つのビルを作ります。

 


発注者 ⇒  元請け ⇒ 下請け(1次請負) ⇒ 孫請け(2次請負) 型枠工事
                                  基礎工事
                                 上下水道工事
                                 電気工事

                                                                                                                  等々の専門業者   

 

IT業界も同じような構造になっていて、例えば銀行が発注者の場合、先ずコンピュータメーカーが受注します。

コンピュータメーカーはキャッシュデスペンサー(機械)を作る部門や、中のソフトウエアを作る部門などに分かれます。銀行のATMの中にはパソコンが入っており、カードリーダやプリンターがついています。
それらの部品一つ一つも別々の下請けのメーカー作っています。


発注者 ⇒ 元請企業 ⇒ 下請企業 ⇒ 2次請企業

 

通帳に残高を記帳する仕組みを考えてみましょう。

残高は、ホストコンピュータ(センター)やサーバーといわれるパソコンに蓄積されており、ネットワークを介して端末とつながっています。
このネットワークを設計するのも、パソコンにデータを蓄積するのもIT企業の仕事です。
大きなセンターのコンピュータは データセンターという場所で、セキュリティの専門会社や運用の専門会社によって監視・管理されています。このセンターに入っているコンピュータはメーカーが製造した後、OS(オペレーティングシステム)・セキュリティシステムなど組み込まれ(OSやセキュリティのシステムを専門に開発しているメーカーが別にいます)、運用管理のミドルウエア(管理・監視のための専門のソフトウエアでこれも専門に開発している会社があります)そのうえに、銀行のオンラインシステムが構築されます。また、このデータセンターマシンにつながっている端末・ATM機器なども専門の会社があり開発されています。
 指紋認証・ICカードなども専門の会社もあり、認証システムの開発をしています。これらの非常に細分化・専門化されたシステムを取りまとめて仕事を進めるのが元請け業者のコンピュータメーカーです。そして、建設会社の場合 設計書通り物が作られているかを、一級建築士施工管理技士が監督しますが、IT業界の場合 SI(システムインテグレーター)と呼ばれるコンサルタントが担当しています。
IT業界の面白いところは、仕事の内容によっては、規模の大きな会社が必ずしも取りまとめを行うわけではないということです。
世界に例のない最新式の画期的なICカードが開発されたとします。
このカードを各企業(交通機関、金融機関など)が、積極的に採用した場合、この技術の中心にいるICカード会社が主導して仕事を進めていくこともあります。
先進的な技術をもっている会社がその業界の仕組みを引っ張て行くことになるのです。
IT業界の技術革新は日進月歩です。今、元請に立場にある会社が数十年後も、必ずしも同じ状態であるわけはないのです。一方、何十年も一生懸命努力しても技術が陳腐化して斜陽を迎える企業も多くあります。
  
最新の技術を独占出来て、その技術を利用した新しいサービスを生み出すための資金を集めるために店頭公開(株を上場する)して、自らも多くの富を得る、短期間で成功を手にする才能のある若者も数多く輩出していますが、何年仕事をしても報われない技術者も多くいるのがこの業界です。