IT企業で働くこと

ITという業界は、エンジニアの経験がスキルシート(経歴書)で公平に評価され、地縁に頼らなくても、札幌や東京など、どこでも同じように働ける数少ない職種です。
一方、派遣法が何度も改定されそのたびに、IT業界は、働き方の問題点を指摘される格好の餌食になっています。しかし法律は、その法律を理解し利用される側の解釈によって大きくその評価はわかれます。
 ブラック企業と揶揄されることも多いIT業界ですが、IT業界にいる人事関係者からは、ブラック社員という言葉も聞かれます。どちらにしても働く側も 雇う側も正しい認識をもって仕事をすれば、間違いは起こらないと思います。
最近、改正派遣法について熱心に議論されています。
派遣法は、1980年代初頭から「業務請負」という働き方について議論され1986年夏に制定されたものです。
当初の派遣対象業種は13業務に限って行われソフトウエア開発もその中に含まれていました。そして、1996年の法改正では、ソフトウエア開発・保守、OAインストラクション、セールスエンジニア(営業)を含む26業種に拡大されます。
ソフトウエア開発における委託契約では、「SES契約(システムエンジニアリングサービス)」と呼ばれる「準委任契約」があります。(準となっているが、委任契約の下位に位置づけられる契約ではありません。委任は法律関連の委任契約に使われる用語で、システム開発は法律業務ではないので準委任といわれています) 「SES契約」は労働法規上は、「業務請負」の一種とみなされ「準委任契約」では、労務管理や指揮命令系統などが発注元企業から独立している必要がある点が、発注元企業による指揮命令の下で業務を行う「派遣契約」との大きな違いになります。
「SES契約」は「委託契約」ですから、発注元企業の現場で「請負契約」や「派遣契約」との区別ができていない場合、直接指揮命令を受けたり、業務の完遂をせかされたりする可能性があります。また、「SES契約」であっても実態が「派遣契約」と変わらないときは、いろいろな問題が生じるケースが出てきます。
私は、10年間メーカ勤務の経験がありますので、その時の立場で言えば、優秀な人材が「派遣契約」で入ってきてプロジェクトを支えてくれるときは本当に助かりますし、派遣なのかSESなのか働いている職場では区別をつけずに働いてもらうこともあったと思います。
その20年後後、準委任・派遣中心の営業所を任され多くにSEや新卒者を採用しましたが、その時から派遣での働き方に再び疑問がわいてきました。

そのころ仕事をしていた営業所では、人を採用すると派遣先(入場先)を営業して開拓し、社員を開拓先に常駐させます。        
仕事は基本的に客先で行い、出社退社時間は派遣先の規定に合わせます。

この営業所で勤務していたときに、いろいろな疑問が湧いてきました。

①業務多忙につき増員したのに、採用してから仕事を探すというのはどういうことだろう?)
②(内定をしだしたのに、仕事が決まってからの入社日にしている。人によっては一ケ月以上入社が伸びるのは良いことなのだろうか?)
③日々の連絡はメールを使い、月に一回 土曜日に全員で集まって営業所の会議を行います。そこで、派遣先の仕事の予定、増員計画などの情報を共有し、仕事が切れる社員にはその仕事が来るように調整を始めます。(ほとんど他社で仕事をしていて月1回程度のミーティングで愛社精神とか仲間意識があるのだろうか?)
④会社の規定には フレックス・裁量労働・変形労働制・みなし残業などの言葉が並びますがどのように運用されているのか社員は理解しいるのだろうか。会社は変形労働を採用しているのに、派遣先は月200時間まで固定労働時間になっているけど、本人たちは知っているのだろうか? 
⑤会社には、会社貸与のPCも机もロッカーもなく、広いスペースに机が一個だけ。これからどんな開発をしようと考えているのだろうか?


そうして、もう一度、開発について基本に戻って考えてみました。

①仕事の注文が入ったら出来れば自社の社員で作れるのが良いが、システムによって規模も納期も大きく変わってきる。そのため派遣やSESという仕事は、仕方がないと発注元は考えだろう。
仕方がないので派遣会社に仕事を出すのです。言いかえると、自社で間に合わないから、忙しいから仕事を出します。
②忙しい仕事が日常ですので、派遣やSESで作業しているSEに申し訳ないという考えで接してくれると良いのですが、忙しさが日常化しているため、問題が起きても黙認してまう。
③そもそも、労働者を派遣する行為は積極的に進められたものではなく、許可を受けた企業だけが行える仕事だったはずなのに、IT業界の働き方は派遣とどこが違うのだろう。

国は、雇用については、発注元と労働者の直接雇用が大前提でした。その経過措置として派遣を認めたはずでした。
IT業界では、この問題を良くしていく姿勢努力を見せる経営者・会社と、制度を悪用して運用している会社が残念ながらまだたくさんあるように思います。